顧客と最高の信頼関係を作る営業ツール
フォレスト出版 蒲池崇(著)
「自ら営業を行わなくても、お客様が自社の商品を購入していただける」、このような状態を作り上げることができれば、営業にとってはこの上ない状況ではないでしょうか。この状態に持っていくためには、商品やサービスが良くても、また価格が低くければ良いのでしょうか。
その答えは「否」です。
いくら商品やサービスが良くても、また価格が低くても、それだけでは、このような理想的な状態に持っていくことはできません。そこには、お客様との信頼関係が重要になってくるのです。それでは、お客様との信頼関係を向上させるには、どうすればよいのでしょうか。
その答えは、「個人通信」にあるのです。
1、「3人のレンガ積み」とお客様との関係
「3人のレンガ積み」という話はご存知でしょうか。
むかし、ある旅人が3人のレンガ積み職人とあい、それぞれに何をしているのかと聞いたところ、一人目は「見りゃわかるだろ!レンガを積んでいるのさ。食うためにやっているんだよ。文句あるか!」と言い、2人目は「私は壁を作っているのですよ。」といい、3人目は「私は、ここに大聖堂を作っているのです。ここで多くの人々が祝福を受け、悲しみを拭い、多くの人々が救われるのです」と答えるという話です。
この話は、しばしば、自身の仕事に向き合う態度について、使用され、「あなたの仕事は何のために行っていますか?」と締めくくられますが、これをお客様からの目線で考えたときはどうでしょうか。
この3人のうち、誰に仕事を依頼したいですかと質問すると、全員が3人目のレンガ積み職人を選ぶことでしょう。しかし、よくよく考えてみてください。どのようにして仕事を依頼する相手が、3人目の職人であると判断することができるでしょうか。金額の大きい案件であれば、数社から相見積もりを取得する際に、一人一人じっくりと話しを聞くということも可能でしょうが、すべての取引でそのようなことを行うことはできません。
また、このお話では、旅人に聞かれたことに回答することで、考えを正しく伝えることができていますが、実際にはお客様から仕事の考え方を問われることは滅多にありません。つまり、自分自身が3人目のレンガ積み職人であることは、自分自身から発信していかなければ、お客様に伝わることがないのです。
2.個人通信の重要性
先述したとおり、自分が3人目のレンガ積み職人であることは、自分自身で情報発信していかなければ、お客様には伝わりません。しかし、ここで気をつけなければならないのが、お客様への接触頻度を増やしすぎると、逆に迷惑になってしまうということです。いくら、自身が3人目のレンガ積み職人であることを伝えたとしても、お客様の都合を考慮しなければ、正しくそれを伝えることができません。
例えば、家電量販店で新しく購入する家電を見に行ったとき、しつこく店員に付きまとわれて辟易とされたかたも多いのではないでしょうか。いくら商品知識があり、おすすめの商品を教えてくれたとしても、一人でゆっくりと見たいときにまで付きまとわれてしまうと、そのお店が購入したくなくなることもあるかと思います。
つまり、お客様との接触の機会は増やさなければなりませんが、増やせば増やすだけ、お客様から煙たがられる存在になる可能性が増えるということなのです。
では、どのように接触の機会を増やすのが良いのでしょうか。直接、お客様の時間を頂戴して、自己アピールするというのは、論外です。では、電話という手段もありますが、こちらもお客様の時間を拘束してしまうことに変わりはありません。そこで有効なのが個人通信なのです。
個人通信であれば、お客様の時間の空いたときに、お客様自身の意志でご覧いただくことができるため、お客様にとって不快に感じることが少ないのです。だからといって、毎日のように贈り続けても、ご覧いただくことはできません。週1回や月1回というペースで送付することで、徐々に自身のアピールを行っていくことが重要となります。
3.個人通信の成功事例
ある工務店の営業担当者は、資料請求いただいたお客様に対し、説明資料を持参して訪問したところ、あいにくご不在でした。そこで、説明資料と個人通信を投函することにしました。本来であれば、改めて訪問したり、電話で状況を確認すべきところですが、その営業担当者は、業務が忙しく、それらが一切できないまま、定期的に個人通信を送付するだけにとどめていましたが、ある日、そのお客様から「そちらで家を建てたい」との連絡をいただいたそうです。
この時点で、営業担当者はお客様に一度もお愛したことはありませんでしたが、この後、2週間で契約成立につながったということでした。
4.個人通信に書いてはいけないこと
個人通信は、自分自身をアピールするための媒体であるため、好きなことを記載していいのですが、読み手はあくまで、お客様です。お客様が不快になるようなことは記載すべきではありません。そこで、個人通信に記載すべきではない8項目についてご紹介します。
① 商品の売り込み
個人通信は、自身を売り込むツールであって、商品を売り込むツールではありません。個人通信に商品の売り込みを行う文言があった場合、その個人通信は、ただの広告ツールとなり、記事の内容についてお客様から信用を得にくくなってしまいます。
商品の売り込みを行うのであれば、商品を売り込むためのダイレクトメールを活用すべきであって、自身を売り込む個人通信に記載すべきではありません。
② マイナス要素
自分自身を持ち上げるために、他のマイナス要素を記載するのもおすすめできません。個人通信はポジティブな内容であるべきですし、他人を批判する内容は、読んでいても不快に感じられてしまいます。しかし、自分自身の失敗談を載せることは、共感を得てもらうことができるという意味で、多少であればのせても問題はないでしょう。
③ おもしろくない記事
誰かの文章をそのままコピーするといったオリジナリティがない個人通信は、一度目は読んでもらえても2度目以降は読んでもらえなくなるでしょう。読み手にとって、思わず目を通したくなるような、オリジナリティあふれる記事が必要です。
④ うそ
自分自身をよく見せようとして嘘を書く場合がありますが、これは絶対に行ってはなりません。逆に信頼を失う結果となってしまいます。
⑤ ライバル他社批判
②と共通する項目ですが、ライバルの批判を個人通信に乗せるべきではありません。他人を蹴落とすような人は、信頼されないと心得る必要があります。
⑥ 宗教、政治、シモネタ
これらは、人によって思想・思考が大きくことなる題材です。一般的にはプロ野球についても載せるべきではないとされていますが、現代においては、そのへんは少しゆるくなっているような感じがしますが、宗教、政治、下ネタは記載すべきではありません。
⑦ 長過ぎる記事
記事が長すぎる、文字が多すぎる個人通信は、手にとって読んで頂くことができません。読み手の時間を考慮した記事のボリュームであることが重要です。
⑧ 続きは次回
次の個人通信も読んでもらいたいという思いで、書きたくなる気持ちはわかります。しかし、これができるのは、少なくとも週1回以上発信する場合であって、月1回程度であれば、読み手にモヤモヤ間がのこるだけでなく、次回にはもう忘れているということも頻繁に発生します。個人通信は1回完結であるべきです。
まとめ
ニュースレターの神髄が詰まっている本です。私もよく参考にさせていただきました。「自分レター」としてさりげない自己開示を行って、素の自分を知ってもらい、お客様に共感していただき、結果として自分をアピールしていくというものですから、営業マンは問答無用で絶対に作って配り続けていった方がいいです。何より自分の棚卸もできるのです。