5分でわかる書籍要約『ファンをつくり出す歯科医院経営』

ファンをつくり出す歯科医院経営
クインテッセンス出版 澤泉 千加良 、 澤泉 仲美子(著)


「ファンを作り出す歯科医院経営」には、信頼がすべてであることを教えつつ成功させる為のヒントがたくさん隠れています。歯科医院の経営で悩まれている方たちの参考になるのではないかと思います。

1、患者さんとの信頼関係とは?

歯医者さんと患者さんの間には“信頼関係”が成立しています。
患者さんとの信頼関係を強くすると数字として現れるのが

  • リコール率
  • 自費診療選択率
  • 紹介患者数

この3つです。

歯医者経営で欠かせないのが、この信頼のバロメーターの数字を上げていくことです。例えば信頼を作る行為に「歯科医院を紹介する」というものもあります。身近にいる大切な人=第三者が関わることによって、信頼感をより強くするというものです。

紹介数の多い歯医者に対しては、スタッフへの信頼度や技術への信頼度が高い傾向にあり、「おすすめしたい歯医者」として友人や知人に歯医者を紹介することができるのです。

2、おすすめしたい歯医者さんにする為の紹介体質改善プログラム

以下の8つのステップを踏むことによって、歯医者のファンを増やし強く育てていきます。

  1. 患者さんからの「紹介の言葉」を集める。例えば患者さんがおすすめした理由には、何を信頼して歯科医院に来ているのかがわかります
  2. 患者さんの紹介した理由を「歯科医院への信頼」「先生やスタッフへの信頼」「技術への信頼」の3つに分けると、そこに多くの信頼が集約されていることがわかります。
  3. 紹介した患者さん同士の関係性をまとめた地図をつくり、紹介した理由のつながりを把握する。回数を見ると何に対して信頼度が高いのかがわかります
  4. 信頼強度を知るために、紹介地図の理由のつながりの回数を見て把握します
  5. 信頼度と信頼強度を元に低い数字を高める取り組みを行う方法、逆に信頼度と信頼強度が最も高い部分を歯科医院の強みとする。体質を改善する戦略を考える
  6. 紹介した理由に関わる物事の量の取り組みと紹介した理由の質を高めます
  7. 複数の取り組み案を出し実際に行うものを決めます。
  8. 信頼を強くする為に優先順位の高いものから実践し、ファンを作る為に強化するポイントを見出すこと

3、歯科医院もエシカルサービスを取り入れる

近頃はエシカルサービスについて身近に考える人が増えています。特に2011年の東日本大震災で自粛・節約ムードの高まり対策として、さまざまな企業が打ち出したのが「収益の一部や全額を東日本大震災被災者への義援金や寄付にあてる取り組み」です。これらの取り組みを「エシカル」といい、消費行動に対してを「エシカル消費」とします。

歯科医院でも患者さんの共感を得る為に、エシカルサービスに取り組むことも必要です。例えば歯科医院のなかには「患者さんの満足度を高めたい」と思っていても何をしたら良いのか思いつかず、戸惑っている人もいるのではないでしょうか。

例えば、来院した患者さんに毎回アンケートを行い1枚につき◯◯円を日本赤十字社に寄付するとします。患者さんにとっても自分のアンケートが被災者支援に繋がり、歯科医院のためにもなると喜んで協力してくれる人もいるはずです。

また、同時に「地域貢献」も合わせて検討するのをおすすめします。歯科医院だからできる社会貢献や地域貢献を積極的に行うことで、ファンを増やしていくことにもなります。

4、患者さんの不安を解消しクレームを防ぐこと

患者さんとの信頼関係を築く為には、「情報提供」は欠かせません。これがうまくいかないと「不安」や「問題」が生じるようになります。なかには悪い口コミの原因となることも。

情報提供のタイミングとして最適なのは…

  • 事前提供
  • 初期提供
  • 来院中提供
  • 来院後提供
  • 継続提供

と複数に分けて行うことです。

なかでも継続については、歯科医院の思いを患者さんに伝えることにもなりますし、気にかけてもらっていること、歯のお手入れの重要性を伝えることにも繋がります。

また歯科医院へのクレームの多くはほんの少しのコミュニケーション不足が関係していることもあります。大きなことに取り組むのではなく、ちょっとしたプラスαの心掛け次第で歯科医院に対しての不平・不満を予防できます。

歯科医院にとってもうレームはできるだけ避けたいもの。リスクマネジメントとしても向いています。

【見つけ方のポイント】

  1. 歯科医院などの不満や不安・不信のきっかけになったものをTwitterなどで探す
  2. そのつぶやきの原因について考える
  3. どうしたらクレームにならないのかプラスαのコミュニケーションを考える

5、患者さんの満足度を高める空間・待ち時間とは?

歯科医院の空間を快適にする為に適した雰囲気つくりも必要です。例えば患者さんでも今痛みがある人もいればない人もいます。また精神疾患を抱え歯医者に来ることを不安に感じる人も少なくありません。

異なる患者さんが最良の精神状態で治療を受け相談し過ごせる環境を作らなくてはいけません。例えば受付はコンセプトどおりでいいですが、待合室はリラックスでき、診療室は落ち着いた和らぐ温かい雰囲気が必要です。

また、歯科医院での待ち時間についてどのぐらい考え対策をしていますか。時間の感じ方は人それぞれ違うものの、嫌なことに対しては「時間が長く感じやすい」とも言われています。なかでも予約制を取り入れている歯医者さんでの待ち時間は不平・不満に繋がりやすいとされています。

5分・10分などの絶対的時間を伝えるのではなく、「患者さんが感じる相対的時間」に対して配慮する必要があります。待ち時間が長くなってしまったとき、「スタッフの声がけ」によるコミュニケーション一つで患者さんの満足度を高めることができます。

待たされる理由と待たされる時間を知らないままでいると、不安やイライラした気持ちになります。

そのためまず、

  1. 待たせてしまっていることへのお詫び(時間が大丈夫かの配慮も忘れずに)
  2. 遅れてしまっている理由
  3. 遅れる時間

を伝えて、お互いの信頼関係を築いていきます。ちょっとしたお声がけだけでも患者さんに取っては安心感を覚えます。

6、患者さんがまた来たいと思える歯科医院作りのポイント

1. 初回カウンセリング

歯科医院でファンを作る為には、「初診カウンセリング」は必須です。
例えば今まで通っていた歯医者さんでの嫌な経験、良い経験や、歯科医院への希望や期待、要望や不安などを患者さんに聞き、「自分の声に耳を傾けようとしている」ことをアピールします。

「何をしたら患者さんが満足していただけるか」を考え期待する応対に答えます。また患者さんの気持ちをいかすために、「来院お礼はがき」を使い「カウンセリングの際に歯科医院へおご希望・ご要望をお聴かせいただきありがとうございました」と伝えます。

患者さんの初回カウンセリングで得た情報を意識して治療や対応を行うことによって、他院との差別化になったり、「自分の声を大切にしてくれている」という気持ちになります。

2. 歯科医院の環境つくり

また、患者さんとのコミュニケーションの取りやすい環境作りも大切です。例えば診療スペースをオープン式のものから個室化したり、カウンセリング専用ルームを作ると、患者さんの心理的ハードルを下げることができます。

またメールでの相談を取り入れている歯科医院もあります。また患者さんがなんでも相談しやすくなるように「サポーター制度」を設けている歯医者もあります。

3. 歯科医院を知ってもらう

歯科医院について患者さんは意外と知らないもの。何ができるのか使い方を教えてあげるためのマニュアルを作る方法もあります。

そのためのポイントを説明します

  1. 患者さんへ疑問・質問・相談のアンケートや、院長・スタッフの全体ミーティングを行い伝えたいことをまとめる
  2. 患者さんとスタッフの声を聴き実践にうつす
  3. 患者さんとスタッフの声は信頼関係つくりにも役立つ

例えば歯科医院の長所・短所を知るきっかけになる→短所を改善する→「自分面接質問表」を作り、長所・短所をはっきりと答えられるようにします。近頃は歯医者で「予約診療」を取り入れているところも増えています。

でも予約を勝手にキャンセルしたり時間を守らあい患者さんがいるのも確かです。予約診療に対して不満を持っている患者さんも多く、それにどう向き合うのか?患者さんの声を活かした「患者さん主導型」のアポイントメントを作り信頼関係の改善に繋がることもあります。

4. 歯科医院を表現する

表現することで歯科医院の売上を伸ばし武器としているところもあります。例えば歯医者のことや治療・予防・セミナー・先生の想い・スタッフなどをホームページや冊子などを使い、患者さんに表現することで「新規患者数を増やす」「インプラントなどの特定の治療方法を希望する患者さんの増加」「紹介数の増加」「信頼関係の強化」などの成果をあげています。なかでもセミナーは、情報を伝え知ってもらえるメリットもあります。

セミナーを開催するためにはまずは実績を作ること、地域の人だけに限定せず「企業・医院・団体」などの参加枠も設けて継続的に参加してもらいます。

7、ファンを作る歯科医院はスタッフ関係も良好

スタッフ一同チームになって働いている歯科医院は、雰囲気が清々しく居心地の良さも感じられます。スタッフの不満をいち早く改善し予防策を実施、良好な人間関係を築く必要があります。

自分以外のスタッフに対しての不満の多くは「自分以外のスタッフが行っている仕事をわかった上ででてきた不満ではないこと」、大抵は自分の見えている部分に過ぎません。だからこそ「ジョハリの窓」を使って、他のスタッフの仕事も見える化しお互いの不満を解消していきます。

歯科医院で働いている人の多くは「ありがとう」といわれるとやりがいを感じるものです。ありがとうは「日頃から役に立っているスタッフ」もしくは「ありがとうをたくさんいっているスタッフ」に多く、患者さん、スタッフ、院外のイベント・はがきなどでありがとうを伝えるとありがとうの多い医院になります。

8、ファンを作る為にデジタルコーチングを取り入れよう

デンタルコーチングは最強のコミュニケーションツールです。通常のコーチングとは違い、歯科医院を専門にしたもので人間関係つくりや患者さんとの関係を良好に保ちます。「聴く力」「質問力」「伝え方」を柱に行い、カウンセリングや自費診療、予防指導への取り組みに大いに役立ちます。

カウンセリングで最も重要なことは「いかに話すか」ではなく「いかに話をさせるか」にあり、まさに質問力が試されます。患者さんの想いや悩みを聴き、価値観を知ること、希望や理想からアドバイスを行いコミットメントにつなげていきます。

デンタルコーチングで最も大切なことは患者さんの幸せを願える人であり、見えないものを大切にし、感謝の気持ちを持てる人でもあるのです。

9、まとめ

どの業界であっても、傾向として男性の院長であれば絶対的な技術を売りにする場合が多いと思います。「人」に対してなかなかフォーカスされていない場合が多い気がします。ですが、あの医院はなにかわからないけど行きやすい、という感性が働いています。患者さんにとっての良い先生の一つは紛れもなく、「この先生は私のことをわかってくれようとしてくれている」と感じさせることができているかどうかも大きくかかわります。この本ではその大切さを語ってくれています。