5分でわかる書籍要約『歯科医院経営の黄金律』

歯科医院経営の黄金律―120%の感謝の心で結びつく
日本歯科新聞社 齋藤忠 (著)

日本の経営が世界に通用しなくなってきている今、国民のために自分たちが存在するという意識を持たないと存在意義を保つことが難しくなっています。

露出する医療ミスや事故など不正の多さもありカルテの開示や事故率・治癒率を公表されるようになります。

だからこそ、患者の為に「利他主義」を優先した診療及び経営が今まで以上に求められています。

1、経営難になる診療所や歯科医院には傾向がある

右肩上がりの経済成長が終わり、独裁経営やカリスマ経営の時代が過ぎ、今後は「オーケストラ型」の経営が求められています。

歯科医院も各部署に有能なスタッフを配置し対応しなくてはいけないこと、院長は人格者を目指さなくてはいけません。デジタル化による弊害についても30年以上前に出版された本で警告されています。

医療も歯科医院も変革期を迎え、現代人の多くの不調はストレスが要因になっています。経済が混乱しているなかでは、過去から培っている固定観念だけで物事を対処していると、有意義な人生にならなくなります。

倒産寸前や倒産した経営者には必ず特徴があり、「ワンマン」「高慢」「過信」による反省する心の欠如が一番に上げられ、モラルが低下した社員を抱えている、目的・目標・計画性が欠如、環境変化への対応力欠如、技術開発の遅れによる欠如、同族経営の不和、公私混同、経営哲学の欠如、決断力、実行力の欠如にあります。

他にも一見表面上は健全そうに見えるものの、日々の運転資金がマイナスの「未病経営」や、「発展疲れ」、盛運時につく「無視」、「依存に寄る生命力の退化」なども考えられます。

またお金に対して過度の執着心を持っていても逆効果になります。創業者として成功する人物は、金離れが良く執着しない特徴があります。欲望を満たしたり才智・才能を発揮する為に行う仕事を“事業”といい、経営者の人間性がにじみ出てくる仕事を“徳業”といいます。

真の利は義を根本としたものでなくてはならず、良い根が根付き、良い芽が芽生え良い花が咲き、良い実となり子孫繁栄に貢献していくと考えます。

2、長く続けられない歯科医院の特徴とは

歯科医院で開業したものの、経営がうまくいかなくなり続けられなくなるのはこんな理由があります。

1. ヒラメ社員の増加

進化論で有名なダーヴィンは、「強いものが生き延びるのではなく、変化に順応できた者だけが生き残る」ことを言い残しています。国家や事業にしても社会の価値観の変化への対応力こそが生命線になります。

経営者が独裁者のように振る舞うようになると、社内は上にだけ気に入られようとする無能なヒラメ社員が多くなってしまいます。因果応報として、独裁者のまわりには、ヒラメ社員多くなり、経営に何ら役立たない情報しか得られなくなります。

2. 社会的マナー、エチケット

院長自身が、社会的なマナーやエチケットを身に付けていないとサービスの基本である接客接遇が常識的感覚とずれていることもあります。院長が育っていないと、スタッフも育たないのは当然のこと。

似たようなスタッフしかいない雰囲気が漂います。医院内では過剰なサービスではなく、当たり前のことを当たり前に行うことが求められています。歯科医院の経営の生命線は、再診・初診の有無にあり患者さんに安心感を与えて信頼させなくてはいけません。

3. あいさつがなかった

若い院長に多いのが、開業しても近隣の同業者に挨拶に訪れず、それが常識だと思いこんでしまっています。恩や患者心を持っているのであればあいさつは自然な行為であり、最初の配慮のなさが近隣の歯科医師の反感を招き「困ったときに誰も助けてくれなかった」と命取りになることもあります。

4. 長時間診療

夜間や日曜の診療をうりにしている歯科医院も増えていますが、このような診療形態で故人の開業医が成功するのは大きな間違いです。逆に失敗する確立が高いと言わざるを得ません。

歯科医師として総合的な脂質や価値が低いからそのような時間差の差別化戦略が必要になります。そのような診療形態で有能なスタッフを雇用することが可能なのか?長く勤務してくれない可能性もあります。

5. 黒字倒産

人一倍収入が多い人や、傲慢な院長が陥りやすい、資金繰りの無知からも来ています。短期借り入れとリースですべての資金繰りが賄われており、経費計上しない元本返済がほとんどになります。

税引き後の可処分所得のなかから支払うことになり、後からじわじわときます。ほとんどの院長が資金繰りに対して無頓着な人が多く、経営を裏で支えている院長夫人も似たりよったりです。

40歳を過ぎて患者減・収入減に見舞われる院長が多くなっています。開業後3~5年でおおむね経営が軌道にのり、通帳に1,000万~3.000万円の預貯金が残ります。

この金額では5年~10年後に経営難に導かれることになります。一度見栄の世界に染まると、なかなか脱却するのが難しく金融機関でお金を借りてでも維持しようとしてしまいます。

3、院長の心得として覚えておいてほしいこと

院長として歯科医院の経営を考えたときに、覚えておいてほしいことがあります。

  • 初心を忘れるべからずでリコールを含めたリピーターの有無を意識すること
  • 理念なくして歯科医院経営なし。何を目的にした診療なのか、経営なのかを明確にする
  • 経営者の朝は誰よりも早く起きる院長の未来は明るい。誰よりも早く職場に入る
  • 自己改新の第一歩として師と仰ぐような人物を心中に抱くべき
  • まかないの原点は“気付き”にあり、無限の真理が存在している。生涯求めるべきもの
  • 今日の悟りは明日の迷いとして悩むことで成長すると考える
  • 人格者とは、社会的に評価されるようになり、立派な徳を身につけ社会に貢献する
  • 歯科医師の春夏秋冬として人生にロマンを持つことで支柱が整う
  • 誰と交わるか?日々交わる人物次第で、己の想像人性が左右される
  • 名刺入れはお持ちですか?院長である前に一人前の社会人でなければならない
  • 指導者は常に明るく部下に対して元気、活力を与えること
  • 脱「人間機械論」で一面的ではなく多面的に捉えること
  • スタードクターにこだわらず、無名であるがゆえに人格者の医師も多い
  • 患者に選ばれる医院から引き寄せる医院で清潔感を意識する
  • 母や妻、パートナーなど影で支えてくれる人物や師の存在が大きい
  • 経営と家庭のキャッシュフローに興味を持ち改善していく
  • ディーラーは総合的に判断したうえで決めるべきもの
  • 税理士に対して過度に求めすぎない。アドバイスは一部のみ
  • 情報化社会が促す数値化診療を積極的に取り入れる
  • 院長がトイレ掃除をすると人の痛みや思いやりが肌でわかるようになり、己の心を養う

どれも重要なものになり、院長として人の上に立つ人間だからこそ意識するべきポイントです。どれが欠けても結果が残せる院長にはなれません。

4、人性を学ぶためにも必要なこと

人性を学ぶためにどうしたらいいのか迷うこともあると思います。さまざまな本を読むよりも「座右の書」を何十回と読むほうが大いに自分を育て養ってくれます。

活字を見るものから読むものとして考えることも必要です。活字は社会的な知性や思考力を養ってくれるものになり、数千年の歴史的風雪に耐えてきた生きた人生経験を伝えてくれる道具でもあります。

巷に溢れている週刊誌は雑多な知識を並べ立てているだけであり、人間性を養う視点で見るととても弱く信用できません。昔から「和をもって貴しとなす」国家体制の理想理念を掲げている大和人が民主主義を良しとするのは疑問があります。

例えば「1に道理」の渋沢栄一さんといえば、明治維新後の近代化社会の重鎮として活躍した人物です。教科書などで一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

事業を営む心得として「1道理が正しいか、2人の和を得ているのか、3己の分にふさわしいか、4時運に適しているか、ということを基準にしなければいけない。そうしなければ事業を営む意味を為さない」とし、時代に左右されることのない経営論でもあります。

5、スタッフを人財にするために

スタッフを“人材”から「人財」にするために、朝のスタート絡み直す必要があります。物事のエネルギーはプラスになることもあれば、ゼロやマイナスになることもあります。

院長とスタッフのエネルギーがうまく調和されないと、医院のエネルギーがマイナスになることもあります。物事を判断するうえで、相手の立場になって考えることも必要です。すぐにできることとすれば、スタッフうよりも先に医院に入るのが常識と考え、スタッフへの見本となる必要があります。

また、求人をかけたときに「スタッフが集まらない」「定着しない」など嘆く院長もいますが、最初から自院に都合の良い人など存在しません。有能なスタッフに育て上げるのが常識的な判断でもあり、育成できる院長なのかが求められます。

院長は、医院の売上をスタッフと共有し経営感覚を共有すること、スタッフを使い捨てではなく「あなたが必要!」という姿勢を持つことも重要です。「あなたが必要と感じない」姿勢と、「非常に必要なんだよ」という姿勢では、育成度に180度の違いがでます。

人間は必要とされてこそ、実力が出せるといっても過言ではないのです。スタッフが成長できるかどうかは、院長の人格によって左右されるといっても過言ではありません。自らが手本となってスタッフを育てていく気持ちや考えも大切なのです。

6、まとめ

院長は医院の経営者としてもスタッフの見本であり続けなくてはいけません。日々スタッフの教育に取り組んでいる院長であり、スタッフを育てる意欲を持ちましょう。

院長が人格者だからスタッフが育つとは限りませんが、人間教育(道徳)は重要なものになります。またあなたの好きな座右の書を覚えておくと、困ったときにモチベーションのUPにも繋がるのではないでしょうか。

歯科医院の黄金律は、患者さんに対してもスタッフに対しても感謝する気持ちを持ち続けたいものですね。