5分でわかる書籍要約『増患増収の予防歯科医院作り』

増患増収の予防歯科医院作り
(歯科医院経営実践マニュアル vol.21)
クインテッセンス出版 石川 明 (著)、岩田 健男 (著)

歯科医療について正しい知識を持ち、これから来るべき「予防歯科時代」でも生き残れる作戦を模索していかなくてはいけません。そのためのハウツーについてまとめられた書籍になり、うまくいかずに悩んでいることのある歯科医院にとっても、勇気がもらえるはずです。

1、時代とともに変わる歯科医療とは

日本の歯科医療は1970年・80年は過去から学び、90年に入ってから過去とは違った技術の革新が集中的に行われるようになりました。米国では1950年に歯科3大発明や歯周外科、ナソロジーをなんとか磨こうとしていたのが臨床の中心だったといわれています。

このモデルは、う蝕と歯周病の治療及び近代歯科のグローバリゼーションに大きな貢献を果たしました。ただ約25年の歴史のなかで、モデルの欠点が指摘されるようになり、耐久性にも限界があることが判明したのです。

2000年代に入り、非感染性慢性疾患や歯周医学についても、中高齢者向けのQOL(生活の質)の向上が問われるようになります。歯科医院として生き残る為には「過去を気にせず」「変化の先を読む」のが必要な時代になります。

日本の歯科医療にとっても変化のときになり、「一人ひとりが口腔環境をいかに守るのかと問いかける」かどうかの課題が見えています。

モデルの構築までには10年、15年の歳月を要すると思われますが、ひとたび予防歯科モデルが国民の意識のなかに定着すると、新しい分野の知識や治療テクニックが必要になります。今後、歯科の生活習慣病が顕在化し、咬合病や審美病、歯科医学の症例の増加に繋がります。

実際に2005年に浜松市と、湖西市の住民2,000人を対象にマーケティングリサーチが行われました。ここでわかったのが、我が国の歯科クリニックに対する住民の行動は意識を持っているながらも行動しない不一致の状態が多く、受診率が著しく低い傾向にあります。

そのため、住民の受診意識を向上させ受診を素材する障害を取り除いていく必要があります。特に予防歯科は修復歯科とは違い、収益との利益率があまり良くありません。

また、予防患者と修復患者、包括患者では別な治療費体系が必要になります。患者の要求度や願望の違いや、治療内容の質の違い、治療に要する時間の差、技工内容と技工料の相違など、目標を達成するためにも高度な技術や長い治療時間、制度の高い技工内容が必要になります。

2、予防歯科が到来すると日本の歯科医療が大きく変化する

以前の歯科診療は患者さんのニーズとして「痛みを取りたい」「噛めるようにしたい」などかんたんなもので成り立っていました。

治療経過後10年もすると治療した患者さんにさまざまな問題が出てきます。歯根破折やマージンの二次齲蝕など…。これらの患者さんには一定の傾向があると考えられており、エンドやペリオの問題や、多数の歯牙欠損、術後の口腔衛生状態が悪い、術後全く定期検診に来院しないなど、重要性を認識していないケースが多いようです。

2000年以降になると、リコール・メンテナンスへ患者さんが積極的に参加してきたり、口腔内を本気でよくしたいといった意識や講習の除去が向上、小児のう蝕が圧倒的に減少した、自分の歯を生涯保ちたいという願望が増加したなどの特徴があります。

日本のDMFT指数を見ると年々下回ってはいるのですが、生活習慣や受験生活などの中高生以降の思春期になってう蝕の増加が見られます。成人以降のう蝕についても、欧米諸国と比較して以前として高い数字なのもわかっています。日本では定期的なメンテナンスや、一人ひとりにあったオーダーメイド的な予防計画の立案と実践が必要です。

3、日本で予防歯科を導入する留意点とは

日本の歯科治療は、処置が中心となり制限がたくさんあります。患者さん主体のオーダーメイドの予防やメンテナンスを行う為には、自由診療に頼らざる得ない点も出てきます。

地方にある歯科医院だからと自由診療が無理だと話す人もいるのですが、実際に同様の価格で同じ用に売れている歯科医院もあります。地方だから…は後回であり思い込みに過ぎません。

患者さんは本当に良いもの、価値のあるものならば費用をかけることをいといません。「自由診療をすすめると患者さんはこなくなる」「悪い評判がたつ」ではなく、歯科医院が一体となり患者さんに本当に価値のあることを伝えていかなくてはいけません。

また、自由診療のPMTCははじめから適正な値段で始めることが重要です。どうしてもためらいがあるなら、初回の1回は無料のほうがおすすめです。PMTCの症例を見ると、人間の好意はコミュニケーションの回数の2乗に比例するとも考えられます。

これは心理学によるもので、接する回数が多いほど好意が増すといわれています。来院の動機が治療ではなく、予防メンテナンスであればなおさらになり歯医者に対しての親しみの気持ちも大切です。そういった気持ちを持った患者さんは、治療が必要になったときは必ずといっていいほど戻ってきます。患者さんの継続的な来院は、歯科医院サイドや患者さんサイドの両方に恩恵があるのです。

4、予防歯科を導入する手順や実践方法は

予防歯科を導入するまえに、まずは自院を分析することからはじめていきます。顧客の数や、ユニットの稼働率、月の診療日、1時間当たりの売上など、まずはデータ化して現在の歯科医院の状態を明確にしていきます。

ただ自費診療を進めないほうがいい患者さんもいます。例えば極度に神経質な患者さんだったり、要求する内容が極端すぎるくらい高い患者さん、アポイントを守れない患者さん、自分の口腔内への関心がなく、モチベーションが低い患者さんです。

これらは歯科医院にとっても要注意になることが多く、できれば避けたほうが安心でもあります。

予防歯科を実践するためには

  • 予防歯科のターゲットとなる患者さんを絞る
  • オーダーメイドの予防メンテナンスは自由診療で行う
  • スケジュールを工夫する

など、PMTCのメリットを説明してしっかりと理解してもらう必要があります。患者さんに理解していただけないのは、歯科医師や歯科衛生士がPMTCのメリットを理解して自信を持っておすすめできていない可能性があります。

また、患者さんの定期検診を行っていく感覚としては、付着喪失のない限りは6ヶ月ごとが理想的だといわれています。歯周組織の状態やう蝕の活動性などによって患者さんごとに1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月などオーダーメイドで考えていくことも大切です。

予防歯科を効果的に行うためにも、歯科衛生士の存在が必要不可欠になり、必要なスキルを取り上げながら予防歯科を導入し実施、成功させていくようにしましょうね。歯科衛生士は、歯周治療だけの知識ではなく、通常の一般治療の流れや知識についても持つ必要があります。

治療の経過を知ることで、予防メンテナンスでよりきめ細やかな処置ができるようになります。歯周治療には解剖学、X線診断学、咬合や保存治療などの幅広い知識がバックグラウンドとしても必要になり、アシスタントの仕事を通して体験から学んでいきます。

日本は世界でも類を見ない超高齢化社会でもあるので、高齢者の患者さんも多くなります。なかには全身疾患を持っていて内科的治療を受けている患者さんも少なくありません。歯科衛生士も代表的な疾患や循環器系疾患、糖尿病などの基本的な知識を把握しておく必要があります。

また、メンテナンスに関する用語をスタッフそれぞれが別々に話すのではなく統一した知識として共有しておくことも求められます。ほとんどの患者さんでも説明されたときにわかるように、誰もが理解できるようなわかりやすい表現にします。長期間歯科医院に通うからこそ、患者さんとのコミュニケーションも重要です。

5、予防歯科の主役になるPMTCを理解しよう

専門家によって、歯面のプラークやバイオフィルムを物理的・機械的に除去する処置のことを、PMTCと呼びます。到来の歯科診療にはなかった「快適さ」や「心地よさ」を提供してくれるので、患者さんにとってはモチベーションの維持に繋がります。

一見同じ用におもわれがちなスケーリングですが、これは歯周基本治療の1つになり治療をメインとしたものです。PMTCを歯科医院で導入するときは、できるだけ予防専用の個室を準備しておく必要があります。

できるだけ治療を連想させるものを周囲に置かないこと、「治療とは全く違うものを」見た目から患者さんに伝えていく必要があります。

6、NBMで患者さんとの関係を良好なものに変えていく

NBM(ナラティブ・ベイスト・メディスン)とは、物語と対話に基づく医療のことになり、近年注目されている方法でもあります。患者さんのナラティブを中心に行い、その日の考え方や正確、好み、趣味、職業、人間関係などを包括して考えます。

患者さんとは長いお付き合いになりますので、ナラティブを意識したほうが良好な関係を築いていけるのです。患者さんと会話するときに、頭ごなしに汚れやう蝕を指摘するのではなく、患者さんそれぞれの状況に応じた対応がナラティブでもあります。

具体的にいえば日本の「場を読む」「空気を読む」ことこそ、ナラティブです。歯科医院はコミュニケーションが特に重要であり、治療が長期に渡ることが多く、治療が終わってもメンテナンスとして通うこともあります。苦痛を伴う治療がお多いからこそ、患者さんの負担を少しでも軽減する必要があるのです。患者さんの多くは、治療だけでなく、心の満足度も求めていることを忘れないでくださいね。

7、まとめ

歯科医院として患者さんに選ばれるための条件やリピート率をあげるためにも、今すぐ実践できる内容がたくさんあります。

これからの日本は予防歯科が主流になるからこど、時代を先読みした対策ができているのかどうかで、歯科医院の増患増収に繋がるかが変わってきます。

また患者さんとのコミュニケーションもナラティブで長くお付き合いできるように、変えていきましょう。