5分でわかる書籍要約『お客様が「減らない」店のつくり方』

お客様が「減らない」店のつくり方 (DO BOOKS)
高田 靖久(著)

この本では、以下のような夢物語とも思える事例が実例をもとに紹介されています。これらの事例には一つの共通点が存在します。それは、当書のタイトルが示すとおり、新規顧客の開拓ではなく、「既存のお客様」を減らさないことに焦点を当てているということです。それでは、各事例について、どのようにして夢物語を達したのか見てみましょう。

事例1)新規集客をやめたのに業績を伸ばし、100名以上のスタッフを抱える企業に成長した美容室

この美容室は、新規集客を第一に考え、様々な対策を講じてきました。しかし、手を変え品を変え、様々な試みを行いましたが、もともとの人口減少や低価格店の登場で、新規顧客の獲得に至りません。そこで、この店舗のオーナーが考えたのは、「新規の顧客よりも既存の顧客」「集客よりも定着」「ディスカウントよりも付加価値」「売上よりも紹介客」という4つの方針でした。

まずはじめに、お客様の年間来店数を、これまでよりも1回増やしてもらうための対策を講じています。こうすることで、新規のお客様を獲得しなくても、来店客数を増加することができます。これができれば、もう1回増やしてもらう、さらにもう1回増やしてもらう、という対策を講じることで、来店ごとの客単価を変えずに、売上は1.5倍、2倍と増加させようと考えたわけです。

この考え方では、急に成長することはできません。

少しずつ来店回数を増やしてもらうことが重要です。焦って、もともと年3回しか来店されないお客様に年6回来店いただく対策を講じたとしても、それでは、お客様は離れていってしまいます。まずは年3回から年4回、それが定着すると、次は年5回というように、時間をかけて対策を講じることが成功の秘訣です。

事例2)お客様の離反が続き一度は店を畳んだものの、今では市内で『一番予約が取りづらい店』と言われるほどの繁盛店を作り上げた居酒屋

一度は、非常に繁盛したフレンチレストランを経営していたオーナーでしたが、徐々に客足が遠のき、残念ながら一度お店を畳んでしまったところから、新たに店舗を立ち上げ、今度は繁盛し続ける居酒屋の経営に成功したお店の事例です。

もともと、このお店は「おいしい」と評判のお店で、お客様の離反は、味が落ちたからというわけではありませんでした。しかし、結果として料理だけでお客様をつなぎとめることができなかったのです。そこでオーナーが考え出したのが、「お客様にお店を忘れられないようにする」ための仕組みづくりでした。

例えば、店舗の○周年に合わせてDMを送付したり、ニュースレターを送付するなどして、お店の存在を忘れないようにしてもらうわけです。それらを単純にばらまいたとしても効果は半減しますが、送付するお客様を限定することで、それらのお客様に特別感を演出し、固定客になってもらうという施策を講じることで、確実に固定客を増やし続けることに成功しています。

事例3)借金5000万円を抱えていたところから、売上260%にまで上昇、売上を100ヶ月以上伸ばし続けている釜飯宅配店

お店は特定少数のお客様によって支えられている、という考えのもと、一部のお客様を大事にすることで、売上高260%を達成した釜飯宅配店の事例です。

固定客を大切にしなければならないという点については、他の店舗と変わりはありません。しかし、この固定客というのは、どの程度のスパンで来店していただくお客様が固定客であるのかについては、その業態によって大きく異なります。

飲食店であれば毎月起こしいただくお客様、美容院であれば、年に数回ご来店いただくお客様が固定客と考えられますが、こちらの釜飯宅配店では、それらの顧客の数を集計する作業時間が取れず、まずは1週間以内に利用していただいたお客様を固定客として考えることにしました。

翌週には2週間分、その翌週には3週間分と、1週間ずつ、固定客とすべきお客様の選定を増やし続けることで、52週後には1年以内に利用いただいた固定客のデータベース化が完了し、それらのお客様に対して、随時ニュースレターの送付等をおこなうことによって3年間で売上高260%への上昇を実現したのです。

つまり、固定客を増やさなければならないからといって、最初から1年以内に利用していただいた顧客のデータベース化を行わなくても、できるところから少しずつ実施していくことでも、効果を発揮することができるという事例となります。

固定客を維持するダイレクトメールとニュースレター

これまでの事例では、いかに固定客を維持することが重要であるかについて、ご紹介しました。それでは、どのようにして固定客を維持するのが効果的なのでしょうか。そこで考えられるのが、上記の事例でも何度か登場したDM(ダイレクトメール)やニュースレターというキーワードです。

① DM(ダイレクトメール)の効果

DM(ダイレクトメール)は「売り込みのダイレクトメール」と言われ、直接的にお客様に来店していただくことを目的としたツールです。よく利用する店舗から「こちらのはがきを持参された方は○割引」というダイレクトメールが届いた経験を持つ方も多いと思いますが、まさにそれが「売り込みのダイレクトメール」です。

このはがきをうけとった人は、「いかないともったいない」という考えから、その店舗に足を運んでくれるようになります。まさに攻めのダイレクトメールと言えるでしょう。

では、毎月のようにこの「売り込みのダイレクトメール」を送付すると、毎月来店してもらえる様になるのでしょうか。

その結果は「否」です。
その代表例がマクドナルドです。マクドナルドでは、毎日のようにクーポンが発信されており、それを使うのが当たり前のようになっています。そうなると、「今回のDMを使わなくても、すぐにまた来る」という考えに至り、「使わないともったいない」という思考には至らなくなります。そのため、「売り込みのダイレクトメール」は、時期を見計らって、ここぞというタイミングで発信しなければ効果は薄いのです。

② ニュースレター

一方、ニュースレターは「売り込まないダイレクトメール」と言われています。なぜなら、ニュースレターは、来店を促すDMとは異なり、店舗を覚えてもらう、忘れないでいてもらう、という目的のために発信するからです。これらの目的を達するためには、4つのポイントが重要となります。

1)売り込まないこと
ニュースレターで、売り込みばかりを記載してもらうと、徐々に読んでもらえなくなります。ニュースレターは、読んでもらわなければ効果がありませんので、まずは読んでもらうことを前提に、売り込まない誌面づくりにしなければなりません。

2)継続すること
ニュースレターが1回だけ来たとしても、それでは人の記憶に残りません。定期的に、継続して送付し、記憶に残してもらうことが重要です。

3)すべてのお客様に送付しないこと
ニュースレターの送付にもコストがかかります。そのため、送付するお客様を限定しなければなりません。ここを見誤ると、無駄なコストとなってしまう恐れがあります。

4)商品を売る前に人を売ること
ニュースレターでは、普段あまり関わることのない店員を売り込む事ができます。「あの人がいるからこのお店を利用しよう」というお客様も少なからずいらっしゃいますので、人を売り込むことで、固定客となっていただけるチャンスも眠っています。

まとめ

ニュースレターを売り込まずに活用して善循環した事例が数種類、掲載されていますのでご自分の業種・業態に応用しやすいのではないかと思います。商品のスペックを売るのではなく、なぜその商品を扱うようになったかのヒストリーを語る。ヒストリーの主人公は人ですよね。商品に関する裏話であったり、社長や店長、スタッフの人となり、おススメするものやその理由など、ニュースレター作りをはじめていくと楽しくて仕方がなくなると思います。